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日本語教師こぼれ話 2013年

やさしい気持ち

 季節は春になり、暖かい日が続いています。
 コートを着たまま教師に冷房をつけるように頼む学生を見ると、去年の冬に出会った学生のことを思い出します。

 学校では、授業中は帽子をとる・コートを脱ぐことをクラスで注意していますが、寒くなりマナーが守られていないことがありました。目上の人の前では帽子をとる、コートを脱ぐというのが日本のマナーです。学生が社会に出た時に困らないよう、クラスでの指導もしています。教室が寒くコートを脱ぎたくないという学生がいた場合は、マナーとして教えた上でコートを着たまま授業を受けてもいいことにしています。

 あるクラスで、ダウンジャケットを着ていた学生がいたため担任の先生が軽く注意をしたそうです。その後、教師と一対一で行う口頭のテストが始まりました。すると、注意をされていない別の学生がテストの最中に急に泣き出してしまいました。担任の先生が理由を聞いたところ、「『教室に入ったら、帽子を取ってコートを脱ぐ』ということが守れていなかった。先生たちに、今までずっと嫌な思いをさせてしまい、本当に申し訳ない。」と言っていたそうです。その日は教室が寒かったので、先生からはコートを着ていても構わないと言ってあったのですが、テストが終わりその先生が教室に戻ると、他の学生もみんな上着を脱いで待っていたのだそうです。

 受け取り方は国によっても個人によっても様々ですが、これから言い方にも気をつけなければいけないとも思いました。暑い国から来た学生は長袖の服がなく、半袖の上にダウンやコートを着ている学生もいました。日本の習慣を教えることも、彼らの事情を考慮することもどちらも必要だと改めて思いました。  相手の気持ちになって考えること。日々の忙しさに追われ、今の自分にはなかなかできないことを学生に教わりました。いつでも優しい気持ちでいたいものです。
(三澤)

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楽しかったバーベキュー(松阪牛じゃなくてごめんね)

 毎年恒例の春の遠足がありました。今回もバーベキューでしたが、学生たちにとっては何回行っても関係ないようです。私にとっても毎年担当するクラスが異なるので、バーベキューでの学生たちの行動を観察するのは楽しみでもあります。
 今年引率したクラスの特徴は、男性が全てを仕切っていて、野菜を切ったり、焼いたり、道具の片付けまで全てを行っていたことです。一方、女性は野菜の切り方がああだこうだ、まだ焼けないのかと口がよく動いていました。もちろん食べるために口を動かしていたのも女性たちのほうが目立っていました。しかし、男性が調味料が欲しいと言えば女性がすぐ探して渡すなど、連携プレーもできていたので感心させられました。当日の天気がよかったこともありますが、教室で見せる表情とはまた違った、どこか開放された明るい表情が印象的でした。
 たくさん食べたことだし、また明日から勉強頑張りましょう!(阪上)

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褒められて伸びるタイプ

「昨日、勉強しなかったでしょう。3点しか取れてないよ。」
「しましたけど、漢字むずかしい…すみません…」
 今担当しているクラスはカタール、セネガル、フランス、タイ、カナダなど非漢字圏の国か ら来た学生が多く、毎日の漢字テストがネックで、このようなやり取りは日常茶飯事になって います。

 ある日、カタールの学生とおしゃべりしてアラビア語を教えてもらった時のことです。
「アラビア語でおはようは?」
「サバーヒルヘイル」
「…サバーヒルヘイル、むずかしい…」
「先生、上手ですよ!」
わたしは学生に褒められて調子に乗って、
「じゃ、ありがとうは?」
「シュクラン」
「…シュクラン」
先生、ほんとうに上手です。」
「本当ですか。うれしいですね。」
 学生の気分になって楽しいなあと思った瞬間、漢字テストのことがふと頭に浮かんできまし た。
 学生を褒めなきゃ!褒められ、期待をかけられるほど、それにこたえようともっと努力をします。人間誰しも「褒められて伸びるタイプ」ですよね。
「昨日より上手に書きましたね。よく頑張りました」と、あしたから学生を褒めて伸ばそうと 思いました。 (尹)

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日本の会社には就職したくない?

 クラスでこれから日本の大学や大学院に進学しようとしている留学生たちと話していた時のことです。
  日本の会社に就職したいですか?という質問に、なんとそこにいた学生の半数以上が「日本の企業には就職したくない」と答えました。

 予想外の答えに、理由をきいたところ、「日本の会社は厳しいから(アルバイト先の会社はとても厳しいのだそうです)」「アルバイト先で社員の人がいつも文句を言っている(飲食業、小売り)」「日本の会社員は大変そう」「日本の企業は残業が多くてとにかく働かされると聞く」などの理由が挙がりました。

 就職はまだまだ先のことだと思っている学生たちなので、真剣に答えていない人もいると思いますし、一般的な傾向とは違うかもしれません。しかし、一方で、一年以上日本で生活する彼らが抱く感想は、身近な日本人を通した、日本の社会に対する素直な感想だとも言えると思います。

 私も彼らにとって身近な日本人のひとりです。私を通して学生たちは何を見ているのでしょうか。学生たちから見た日本人としての私。ちょっと考えされられます。(本多)

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文にこめられた想い

 千駄ヶ谷では初中級の学生の宿題として、教科書とセットになっているワークブックがあります。ある日、一人の学生がワークブックで分からないところがあると質問にきました。

 「チョウさんは去年、         そうです。」
 空欄に正しい文を書く、という問題でした。
 始めその学生は「チョウさんは去年、かわいかったそうです。」と書いていたので、要チェックのマークを付けて返却したのでした。時間をかけて、一緒にどうしてその文がだめか考えました。
 「では先生、『チョウさんは去年、病気だったそうです。』ならいいですか。」と言うので、「それなら大丈夫ですよ!できましたね!」と拍手をしました。
 すると彼は、こう言ったのでした。

「でも先生、私は悪いことは書きたくありません…。」

 はっとしました。
 教師は文法的に正しい文を書かせがちだけれど、本当に大切なことは、学生が表現したいことを表現できるように手助けすることです。たとえ文法が少し間違っていても、その学生が伝えたいことを伝えられることが、本当のゴールなのだと思います。
 また彼の一言で、学生の作る文には彼らの想いが込められていることを実感しました。彼らの優しさや温かみが、言葉となって読む人、聞く人に伝わるようにサポートすることが、今後の目標です。

 結局彼は、「チョウさんは去年、旅行に行ったそうです。」という文を丁寧な字で書き、その場で花マルをして返却しました。(滝澤)

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カタカナ語って難しい!!

 「日本語は難しい!」と学生は口をそろえて言いますが、その理由は人それぞれ。そんな中で、国籍を問わず、レベルを問わず、苦手という声が多いのが、デパート、パーティー、ファイルといったカタカナ語です。カタカナ言葉は、英語由来のものが多いですが、英語が話せる学生曰く、「全然違います!」。
 初級の授業では、ディクテーション(教師が言った文や言葉をひらがな・カタカナで書く)を頻繁に行いますが、先日、「チケット」をディクテーションさせてみました。正しく書けた学生はほとんどおらず、多かった答えは、「チケト」、「チケート」「チケットー」。うん、これはまだ理解できる。確かに似ている。次に「チーケートー」「チーケトー」・・・うん?だいぶ違うような・・・。そして、「チーケット」。えっ、プーケット(島)?学生の答えを見ているうちに、私自身も何が正しいかわからなくなってくる始末。カタカナ語には、学習者が苦手とする伸ばす音(「-」)や、小さい「つ」「や」「ゆ」「よ」、濁音が満載。学生の答えを見て、改めてこんなに聞くのが難しいのかと実感しました。
 先日、学生にカタカナ語を始めとする外来語についてどう思っているのか聞いてみました。

 学生:「外来語がないと、言葉に新鮮みがなくなります。」
 意外にも、このカタカナ語を肯定する意見にうなずく学生が多かったです。一方で、
 学生:「日本人は木のことを「ツリー」と言わないのに、なぜ、わざわざカタカナ言葉を使って東京スカイツリーというのか。」
 なるほど・・・。でも、「東京 空の木」だとちょっと格好悪いのではないかと言うと、
 学生全員:「かっこいい!!」
 そうか・・・学生にとっては、日本語が外国語。日本語の響きがかっこいい!綺麗!と思って勉強している学生も多いようです。
 学生:「カタカナ語ばかり使うと、日本の文化が失われます。」
 昔からある日本語の言葉をもっと大切にしてほしいと思っている学生は多いんですね。
 とはいっても、言葉の変化は抗えないもの。若い学生には、言葉の変化についていって、カタカナ語をマスターしてほしいと思いました。(藤原)

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夢の数だけ

 10月も終わりに近づき、日本語学校では、今年も受験のシーズンを迎えています。「住居デザインを学びたい」「なんとなく経営かな」「国ではやりたい勉強ができなかったから、日本では絶対夢をかなえたい」などなど、学生と面談をするたび、学生の夢の数だけ責任の重さもずっしり感じるこの季節です。

 外国人向けの大学入試では、面接が課されることが殆どなので、面接練習も大切な準備のひとつです。「なぜこの大学」「なぜこの学科」「将来は何がしたいのか」・・・これらを、どのように論理的に順序立てて言えるか、さらに急な質問にどれほど臨機応変に対応できるか等、面接はまさに今までの日本語学習の集大成ともいえる最後の難関です。
 以前、私のクラスに「私は日本の教育を勉強したい」と言った学生がいました。「日本で教師になりたい?」「いいえ、日本では別の仕事がしたい。」・・・さて、困った。全然論理的につながっていない。なんとかこの2つをつなげようと、「教育を勉強したいこと、日本で就職したいこと、どちらが○○さんにとって大切なことですか」と聞いた後に答えた学生の言葉は、意外なものでした。
 「日本に来て、私は日本語学校の日本語の教え方が本当に面白いと思った。私の国では、先生がひとりでずっと話していた。この学校では、先生が私たちに話しかけて、私たちはそれに答える。日本に来て、初めてこんな教え方を知った。こういう教育で育った人と一緒に勉強して、一緒に仕事をしたいと思う。」
 先日、この学生が合格したという知らせを受けました。結局、教師の小手先の力など大したものではなく、彼らは間違いなく、彼らの力で合格していくのです。私はこれからも、学生の力を信じて、しっかりと支えて行きたいと思います。(石川)

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楽しい授業

当たり前のことですが、クラスにはいろいろな学生がいます。彼らは様々な国から、さまざまな目的やきっかけで日本へ勉強に来ています。まじめに勉強したい学生もいれば、アルバイトや遊びに気持ちが向きがちな学生、休みがちな学生、授業中携帯電話を見る癖が抜けない学生もいます。
教師としては、もちろん、みんなにまじめに勉強してもらいたいところです。でも現実はそううまくいかないことが多々あります。

さて、どうしたらみんなが聞いてくれて、毎日学校へ来る気になる授業になるのか・・・。 私もよく考えます。
まだ経験の浅い私の私見ですが、まずはやはり、学生がわかりやすい授業をすること。 それから、楽しい授業をすること。

楽しい授業とはなんでしょう。最近、それは学生が教えてくれると感じています。学生をよく観察して、彼らがどんな話題が好きか、何を勉強したがっているか、知りたがっているか・・・。それをできるだけ掴むこと。
それから、心から笑えること。学生が「わかった」ときや、おもしろいことを話してくれて心から笑ったときの顔は、本当に素晴らしいもので、日ごろの疲れを癒してくれます。そして、教師も本当の笑顔を見せることだと思います。

学生も先生も楽しい授業とは何かを模索し続ける毎日です。(宮城)

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モモたい

 我が家には子供が2人いる。もうすぐ2歳になる下の娘は最近話すのが上手になってきた。
 その言葉の習得過程が面白かったので、いくつか紹介したいと思う。
 まず、いちばん最初に使った言葉が「ちゃった」である。そう、何か失敗したときに残念な気持ちを表す文型「~ちゃった」を最初に使い始めた。例えば、何かを落としたときや、飲み物をこぼしたときに「ちゃったちゃった」と連呼するのだ。ちなみに上の息子の最初の言葉は「ママ」である。(これが普通だと思う)
 娘は名詞の使い方も面白い、例えば親しい大人はみんな「ママ」、父親の私も「ママ」、さすがに父親に「ママ」は恥ずかしいので何度も訂正するが、全く直す気なし。それから鳥類は「コッコ」、大きい動物は「ガオー」、ここまではまだわかる。甘い食べ物はすべて「モモ」、ごはんは何であっても「ウドン」だった。これに「~したい」の「たい」をつけて自分の要求を表現する。例えば「アイスを食べたい」は「モモたい。」ママに何かをしてほしいときは「ママたい。」、実にシンプルでわかりやすい。
 毎回正しい日本語に訂正しようと試みるが彼女はその必要性を感じていないのか、なかなか直そうとしなかった。しかし、そんな彼女も最近、好きな物の名前はきちんと言うようになった。「キリンさん」「ゾウさん」「みかん」。自分が必要だと思えばこちらが直さなくても自然と覚える。ただ、今だに父親に向かって「ママ」というが……。
 日本語学習者も同じだと思う。こちらがいくら大切だからといって言葉を覚えさせようとしても、 本人が必要だと思わなければなかなか覚えられない。大切なのは彼らに必要だと感じさせることなのだが、これがなかなか難しいのである。(土田)

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私の知らない日本

 先日、上級クラスでスピーチの授業を行いました。タイトルは「日本に来て、思ったこと」。実はこのタイトル、初級の作文の授業では定番ですが、上級ではあまり使われていません。今回は、すでに日本の大学や大学院への入学が決定している学生達に、あえてこのテーマで話してもらいました。
 初級では、「街がきれいです」「人が多くてびっくりしました」等、目に見えることについての内容が多いのですが、日本での滞在が1年を超え、日本語を通じて様々なメディアから情報を取ることができるようになった彼らは、より分析的に日本を、自国をとらえるようになります。
 「日本の接客に慣れて一時帰国をしたら、母国の接客に腹が立った。日本式のサービスを母国に持ち込めないだろうか」
 「母国の人は、『とりあえずやってみて、失敗する』。でも日本の人は、『念入りに準備をして失敗を避ける』」
などなど。最近、外国人が日本について意見を言う番組などが人気があるようですが、学生たちは生の「体験者」。彼らのリアルな声を聞くことは、私にとってとても勉強になることです。そんなスピーチの授業、「学生のため」と言いながら、実は「教師の好奇心を満たすため」なのかもしれません。(勝間田)

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