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日本語教師こぼれ話 2014年

日本人の朝ごはんは?

みなさんの今日の朝ごはんは何でしたか。
「日本人の朝食」がテーマの授業でのことです。中国人ばかりのクラスですが、まず、学生に朝ごはんは何を食べるか聞いてみました。「パン」「豆乳」「お粥」。白いご飯は重くて、朝から食べられないそうです。へえ!中国の食べ物というと、餃子やラーメンなどとステレオタイプに考えがちですが、朝食に何を食べているかは聞いてみなければわからないものです。
次に、日本人はどんな朝ごはんを食べていると思うか聞いてみました。「ご飯、みそ汁、鮭、納豆」。ちゃんと日本のステレオタイプを知っているようです。ところが…「おにぎり」そして「そば」との返答。そば??日本の食べ物といえば確かに「そば」は有名ですが、朝から茹でるのは大変だし、食べないぞ…と困惑していると、学生は「駅にたくさんあります」。ああ!立ち食いそばのことです。毎朝、学生は電車に乗るとき、駅の立ち食いそばの光景を見ているのですね。外国の人からは、こんなふうに見えるのですね。
さて、みなさんの今日の朝ごはんは何でしたか?(小川)

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日本語教師の耳

授業中、グループ活動で話し合いをしたときのこと。
学生A「子どものジテンで考えると」
学生B「子どもはセイキョウとともに…」
学生C「ゲームへのイライショが増えています」
学生D「イライショ、あの、確かにイライショウは深刻です」
学生E「以前と比べて、キュウヒ?あ、キュウニチの過ごし方が違います。これが原因かもしれません」
学生A「子どもはゲーム以外にシュミがないかもしれません」
学生B「それは、子どもだけでなくカイシャにも責任があると思いますよ」

これを日本語教師の耳で聞くと…
学生A「子どもの視点で考えると」
学生B「子どもは成長とともに…」
学生C「ゲームへの依存症が増えています」
学生D「依存症、あの、確かに依存症は深刻です」
学生E「以前と比べて、休日の過ごし方が違います。これが原因かもしれません」
学生A「子どもはゲーム以外に興味がないかもしれません」
学生B「それは、子どもだけでなく社会にも責任があると思いますよ」

耳が慣れてきた?のでしょうか。最近、推測できる語彙がとても増えてきました。学生の言いたいことが推測できるのはうれしいですが、教師としては推測する必要がないように日本語を教えたい!と思う毎日です。(木島)

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「夢をかなえて」

 先日、ある卒業生と話をする機会がありました。千駄ヶ谷在学中は、大学院に進学するためのクラスに所属していて、私はその授業を担当していました。希望の大学院に無事合格し、進学していきました。その後は、進学した大学院の名前を耳にしたときに、「あの学生は元気で頑張っているかな。日本人の間でちゃんと研究を進められているかな。」と、ときどき思い出していました。
 ところが、先日会ったときには、アニメに関する専門学校の学生になっていました。話を聞いてみると、ご両親が希望していた大学院を卒業したので、やっと自分のしたい勉強をさせてもらえる、夢がかなった、とのことでした。
 「大学院ではどうだった?」と聞くと、先生に「レポート書いた?レポート出して」といつも言われていたとのことでした。「でも、専門学校の先生は、『課題!課題!』、日本語学校の先生は、『テスト!テスト!』と、どこでも先生は同じですね。」と笑っていました。今は、やりたいことをやっているので、毎日がとても楽しいと言っていました。日本語力にも自信がつき堂々としていました。
 やはり、やりたいことをやっている人は、表情が輝いています。日本語ができればこそ日本で夢をかなえることができるのだと思います。毎日の日本語の勉強は大変ですが、夢をかなえる道だと信じていれば頑張れると思いました。(早川)

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「夏休み明け不登校?」

 ネットで「夏休み明け」を入れると「夏休み不登校」という検索ワードがすぐ出てくる。夏休み明けの学校や仕事を考えると憂うつな気分になる人が多いようだ。初日の出勤をぐずぐずしているわたしは「学生たちもきっと嫌々ながら学校に向かってるんだろうな」と勝手に共感し、そこで思わずため息が出た。
 脳裏に浮かんできたのは、夏休み前の追い詰められた学生たちの深刻そうな顔だった。宿題やテスト、進学のことなどで日々追われていて、学生同士の間では日本語を使って会話するどころか、中国語での会話もほとんどなかった。

 一ヶ月ぶりの教室の外に立ち深呼吸をする。「よーし!」楽しい雰囲気を作ってみんなのモチベーションを上げていこうと心の準備をして教室のドアを開けた。
 その途端、わたしの目と耳に飛び込んできたのは見たことのない笑顔と学生からの「ワ~」という歓声だった。
驚いた。みんな生き生きしている。
 学生たちは競い合うようにわたしに話しかけてくる。夏休み中に行った場所、食べたもの、見た光景を楽しそうに伝えようとしている。日本語を一生懸命使おうとする姿にわたしは感動した。

 適度な緊張感は必要だが、時には学習者に余裕を持たせることは日本をもっと好きになるきっかけとなり、それもまたモチベーションにつながるということをこの時実感した。(尹)

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「エアコンをつけてくれませんか」

 日本語教師の最も嬉しい瞬間のひとつに、「学生が学んだことを使えるようになったとき」が挙げられると思います。特に、私が現在担当している学生は、ひらがなから始めた初級クラスなので、日々著しく日本語力が伸びていくのが見てとれます。
 そして、学生にこそ自分自身の成長を感じて喜んでもらいたいので、新しく学習した文型はなるべくすぐに実際の場面で使うように促しています。
 例えば、先日「~てくれませんか」という依頼の表現を学習しました。その時は、梅雨の真っただ中だったので、教室が蒸し暑く、一日に一度必ず学生にエアコンの温度の操作を頼まれていました。
 初級の学生は、「先生、ちょっと暑い」や「先生、エアコン…」などと短い言葉で何とか伝えようと話します。それで、「ああ、暑いから温度を下げてほしいのかな」と察してしまい、エアコンを操作したくなるのですが、ぐっと我慢をすることにしていました。「そうですね。暑いですね」、「そうですね。エアコンがありますね」と言うので、少し(かなり?)意地悪にも聞こえますが、こういうときこそ実生活に必要な日本語が自然に出てくる瞬間ですから、じっと待ちます。
 すると、学生が「エアコンをつけてください。」ときちんとした文で言います。ただ、もう一歩踏み込んで、他の言い方を覚えているか問いかけます。すると、学生から「先生、ちょっと暑いんですが、エアコンをつけてくれませんか。」と学んだ文型が出てくるのです。
 小さいことですが、こういったことの積み重ねや、何度もそれを使う状況に出会うことで、学生はしっかり文型や言葉を覚えていきます。
 自ら言いたいことが言えて、それが伝わったときの満足そうな学生の顔を見るのがとても嬉しい今日この頃。
 次は「エアコンをつけていただけませんか。」の勉強が待っています。
(阿部)

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春の遠足

 先日、春の遠足がありました。行き先はお台場。今回の遠足では、ただ観光をするのではなく、クラス対抗で課題を達成していく、いわゆる、オリエンテーリングを行いました。
 遠足が始まるまでは「先生、ヒントは?答えは?」と迫られたらどうしようか、出身地や性格や趣味の異なる18名の学生たちが協力し合えるのだろうか、と不安に思う部分もありました。しかし、当日スタート地点で地図と課題の書かれた紙(もちろん日本語!)を渡された学生たちの表情は真剣そのもの。リーダーを中心にああでもない、こうでもないと知恵を出し合い、私の出る幕は全くありませんでした。
 地図に示されたチェックポイントを探しながらあちこち歩く内容だったので、若い学生について行くのは大変でしたが、普段教室では見られない学生たちの姿を見ることができ、とても新鮮でした。
 オリエンテーリングの結果はというと、目指していた総合上位3クラスの中には入れませんでしたが、特別賞の「笑顔が素敵で賞」を受賞することができました。学生たちは残念がっていましたが、笑顔が素敵だったなんて、私にとっては何よりも嬉しい賞がとれたと思っています。
(川畑)

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卒業式

 去る3月19日に千駄ケ谷日本語研究所グループの卒業式が行われました。

 今年は450人の卒業生が巣立って行きました。送り出す側としては、喜ばしい気持ちと寂しい気持ちとで複雑です。しかし、感慨に耽る間もなく、すでに新入生を迎える準備が始まっています。4月には卒業生と同じぐらいの数の新入生を新たに迎えます。

 ところで、私たち教職員は、思い出に残る式になるよう、ずいぶん時間をかけて卒業式の準備をしました。式は厳かな雰囲気で行われましたが、一番印象深かったのは、私たちが手掛けた部分ではなく、学生によるパフォーマンスでした。学生による歌の披露、教職員に向けた「ありがとう」の唱和、そして学生同士の「がんばろう」の声掛け。そのどれもが見ている人の心に深く響きました。

 そのような中改めて気が付いたことは、私たち教職員が学生のためにできることは学生が自分で歩き出すためのお手伝いでしかないということです。実際に歩き出すのは学生達です。卒業式の日に、学生達は私たちの手から離れて自分で歩き出しました。卒業式はそれを見届ける場であるからこそ、私たち教職員は嬉しさと寂しさを感じるのだと思いました。 (関川)

卒業式写真

 3月19日に卒業式が行われました。
卒業式では、友人と笑顔で話す学生、写真を何枚も撮っている学生など、様々な様子が見られました。私のところにも、「今までお世話になりました」と挨拶をしながら泣きそうになる学生、手紙を持って来る学生、写真を撮りに来る学生、私を胴上げしようと集まってくる学生・・・。今まで一緒に勉強してきた多くの学生と話しました。その卒業生の中には、ひらがなの勉強から一緒だった人も多く、そのような学生達が大学に進学していくと思うと感慨深いものがあります。

 今までの彼らの様子を振り返ると、本当に人それぞれです。
  いつも熱心に授業を聞き、課題にも一生懸命取り組んできた人
  勉強の仕方が分からず、一人では勉強できない人
  日本語での会話は好きだけど、漢字の勉強が苦手で文章を読みたがらない人、などなど

 そんな学生達も卒業し、新たなスタートを切ります。私は彼らの役に立てたのか、彼らはこの学校での時間に満足できたのか。学生みんなから「満足できた」という答えをもらえるのかは分かりません。でも、一人でも多くの学生にそう言ってもらえたら嬉しいなと思います。

 また新しい一年が始まります。新しく出会う学生に少しでも満足してもらえるよう、そして一人一人の目標が達成できるよう、私も精一杯頑張ろうと改めて思いました。
(水野)

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「4分の3の上達」

 先日、学生も教師たちも(?)待ちに待っていた遠足に行ってきました。遠足の日は、いつも遅刻する学生が一番に学校に来たり、いつにない団結力でクラスがまとまったり、普段の授業とは違った一面を見られるのが教師の楽しみの1つでもあります。
 今回の行き先はディズニーランド。その前の年はディズニーシーへ行ったので、ディズニーランドは初めてという学生がほとんどでした。
 私のクラスが一番始めに乗ったのは、3Dメガネをかけて宇宙船に乗っているような体験ができるアトラクション。このアトラクションは、船長役のキャラクターが早口で独り言やジョークを言いながら操縦し、イスが激しく揺れます。
 乗り終わったあと、「あまり怖くなかったな」と余裕の表情で話している男子学生たちの横で、とてもニコニコしている女子学生がいたので感想を聞いてみました。

「楽しかったですか?」
「はい!去年、ディズニーシーで同じような乗り物に乗りました。でも、今年の方が もっと楽しかったです!」
「へぇ、どこが去年よりもよかったですか?」
「船長の日本語がわかったことです!去年は全然わかりませんでした。でも、今年は 4分の3ぐらい聞き取れて、ジョークもわかりました!」

 乗り物の楽しさよりも、日本語の上達に大きな喜びを感じ、「4分の3ぐらい」と素直に理解度を教えてくれた学生を見て、私もとてもうれしくなりました。
 この学生はあと3カ月で卒業ですが、「次にディズニーランドへ行ったときは『4分の4わかった』と言えるように、残り3カ月、一緒に日本語を頑張りましょうね!」と次のアトラクションへ向かいながら約束しました。(荒井)

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