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日本語教師こぼれ話 2018年

初恋はいつですか

私「みなさん、初恋はいつですか。」
学生たち「まだです!!」

高校、あるいは大学を卒業した年齢の人が何人も、もしこのように答えたら、みなさんはどうお思いになるでしょうか。
日本語クラスの中で若干の笑いとざわめきが起きた後で、
「せ……先生は…?」
「私?8歳です。」
「ええええええ!!!!!!!!八?ハチ?じゅうはち??はち??」
と指で8を作るなど、驚きと困惑の表情で教室が少しパニックのような状態になります。

そこで、
「みなさん、初恋というのは、どういう意味ですか。」
「えっと…初めて…恋人がいます。」
「そうですか。みなさんの国では、初めて恋人ができたときが『初恋』なんですね。日本では、初めて好きな人ができたときが『初恋』です。恋人にならなくても『初恋』です。」
「お~~~~~~。」
と目を大きく開き、深く頷く学生たち。パニックも収まります。

これは中国・台湾・香港など、漢字圏の学生を対象とした漢字クラスで、「初」の漢字を勉強したときの話です。学校では週に1~3回程度、漢字のクラスがあります。 漢字圏の学生が日本でも漢字を学習する目的は、
①日本の漢字を学ぶ(国の漢字を書いても日本人は分からないため)
②日本語の読み方を知る(漢字圏の学生は、漢字を見れば意味が大体わかりますが、読み方がわからなければ聴解問題や会話の際に分からないため) ③日本語の意味を知る(同じ漢字でも意味が異なることがあるため)
があり、今回のケースは③に当たります。
「同じ漢字を書きますが、意味が違うんですね。」
このように、折に触れ漢字を学ぶ目的を意識させながら授業を進めるようにしています。

意味の違いが分かったところで、もう一度。
「では皆さん、初恋はいつですか。」 「う~~ん、7歳!」「13歳!!」「まだです!!!」(それでも!?)
と、告白大会が始まるのでした。(吉川)

学生からのプレゼント

日本語教師は、学生から世界中の様々なものをもらいます。学生がよく「先生、お土産です。」と言ってお土産を渡してきます。中国の月餅、ベトナムのベトナムコーヒー(砂糖がたっぷり入っていて甘い)、サウジアラビアのデーツ(なつめやしで作られた甘いお菓子)など今まで世界各地の様々なものをもらいました。海外のお菓子は甘いものが多く、甘党の私にとってはうれしい限りです。

また、あるクラスで私の誕生日に授業に入っていたところ、休み時間に学生が「先生、誕生日おめでとうございます。」といってケーキを渡してきました。聞けば、クラスのみんなで授業の前に買ってきたそうです。授業中にちらっと言っただけの私の誕生日を覚えてくれたこと、教師の誕生日にわざわざケーキを買って来てくれた優しさに感動し、少し涙が出そうになりました。

私たちが思っている以上に、日本語学校の学生は教師を信頼し、頼りにしています。これからも学生に信頼される日本語教師でありたいと思います。(松本)

教室で教える生活ルール・マナー

学生達が入学したばかりの頃、授業終了のチャイムが鳴り、「先生、また明日」と足早に去っていこうとする学生達に「椅子をしまってください。」「ごみをごみ箱に捨ててください。」と毎日呼びかけていました。

その当時、授業後の教室は、椅子が全部出ていたり、机の上には消しカスがあったりしました。また、机の中にはゴミが入ったコンビニの袋が入っていました(なぜか机に袋が結び付けられていることが多い)。学生たちは悪気があってやっているわけではなく、使った場所をきれいに戻す習慣がまだ身についていなかったのです。

そんな学生達も毎日言われるうちに、「使った場所をきれいにする」意識を持つようになり、今では何も言わなくてもできるようになりました。

ごみの分別も同様に、最初は燃えるゴミも燃えないゴミも資源ごみも全て同じごみ箱に捨てていましたが、何度も注意していたら、「日本のゴミの分別は面倒くさいです。私の国では分別はしません。」と文句を言いながらも、ちゃんと分別するようになりました。

「使った場所をきれいにすること」や「ごみの分別」は日本人にとっては当たり前のことかもしれません。しかし、外国人にとっては当たり前ではないことなのです。

日本語学校で教えることは日本語だけではありません。学生が日本で暮らしていくうえで必要な生活ルールやマナーもできるだけ教えるようにしています。これらを教えることでいろいろな国の文化を学生から学ぶこともできることに、日本語教師という仕事のおもしろさを感じます。(太田)

台湾マダムの夢

台湾にいたころ、財閥系家族の若奥様の家庭教師を務めていました。30歳を過ぎてから日本語の勉強を始めたという奥様は、賢いうえに努力家であり、新しい言葉や言い回しを書き留めておくための単語帳やノートをいつも持ち歩く熱心さで、私とのレッスンを始めたときは、既に独学で日本語能力試験N2(日本の専門学校に入れる程度のレベル)に合格していました。

ある日レッスン中にマダム(以下「マダム」と称す)のケータイが鳴り、「ちょっと失礼」と言って出ていったマダムは、席に戻るなり「失礼いたしました。アメリカの倅からでしたので」とにっこり。マダムの息子さんはボストンの寄宿学校の高校生で、マダムは40代そこそこの美しい夫人です。

「奥様。セガレはだめです。そこは息子で」というと「あら」と意外そうな様子で「息子よりもっと謙遜した言い方だと思っていました」「どこでお聞きになりました?」「先週銀座のお寿司屋さんで」。和食をこよなく愛するマダムは、お寿司を食べるためだけに飛行機で東京まで行ってしまうことがよくあったのです。「間違ってはおりません。でも江戸っ子のすし職人の話す言葉と良家の奥様が話す言葉は違いますからお気を付けください」「知りませんでした。やっぱし先生に聞かないとだめですね」「やっぱしもダメです。やはりとお言いください」。異国で日本語を教えるとき、相応しい場面で相応しい使い方ができるように教えるのはなかなか大変なことです。異国にいながらいかに自然な話し方を身に付けてもらうかに気を使いました。

私が日本に帰ることを告げたとき、マダムは「先生がいらっしゃらなければ私は彷徨ってしまいます」と大げさな表現で別れを惜しんでくれました。日本人と間違われるくらいの流暢な日本語を身に付けたいというのが、マダムの長年の夢でした。子育てを終えられたら千駄ヶ谷サマーコースにきっと来ると約束してくれたマダムと、ここで再会できる日を心待ちにしています。(大場)

15分のアクティビティ

「勉強しても話せない、使えない」---。語学の勉強をしている人から良く聞く言葉です。私自身も中学生の時から英語を学んだのにもかかわらず、話したいときになかなか話せない、使えないという経験をし、悲しい思いをしたことが多々あります。そのような経験から、自分が教師という立場で学生に日本語を教えるにあたって、「話せない、使えない」と言われるような授業をしないよう、気を付けていることがあります。

それは、その日に学習した文法を使ったゲームのようなアクティビティを入れ、その文法をたくさん使わせるということです。アクティビティは難しいものでなく、15分ぐらいでできる簡単で学生同士が楽しくワイワイできるようなものにします。通常の授業とは少し違った雰囲気の中で、文法を楽しく使うことにより、体に染みつきやすくなります。

この方法によって、「この文法はおもしろい」、「この文法は楽しい」というイメージを学生に持たせることができ、すぐ使いたいと思わせることができます。実際に、授業の合間や休み時間に学生同士で使おうとしている場面を見ると、授業が彼らに役立ったことを実感でき、とてもうれしくなります。少しぐらい間違っていても、「今使いたい、話したい」と思わせ、実行してもらえるよう、授業の15分に力を注いでいます。(掃部)

経験を生かした進学指導

今年、娘の中学受験を経験しました。二年ぐらいかけて娘と説明会に足を運び、学校を選びました。しかし、最終的に娘が選んだ学校は、塾の先生が「受けてみたら?合ってるよ」と勧めてくれた学校で、今、娘は毎日楽しそうにその学校に通っています。

親が求めるのは、こうした偏差値だけではわからない学校のよさを知る経験知です。私もそうした情報を提供できる教師になりたいと思っています。

さて、日本語学校の進学指導では、まず、どんな大学を目指しているか学生に聞きます。ここ二、三年は、一様に「marchレベル」という答えが返ってきます。Marchとは明治、青山、立教、中央、法政大学のことです。
教師: じゃ、大学で何を勉強したい?
学生: 経営。
教師: 将来は何をしたい?
学生: 自分の会社をつくりたい。

最近の学生は、目標を持っていていいのですが、皆が皆marchレベルを目指すため、近年は競争が激しくなっています。

こんな時こそ、経験を生かすチャンスです。学生はその学校を知って選んでいるわけではないので、「ここを受けてみたら?○○のところが、あなたに合ってるよ」、そんな声を掛けるよう心掛けています。そのために、大学説明会に出たり、来校する大学、専門学校の方から話を聞いたりして情報を頭に入れておきます。

また、自身の受験経験や日本人として一般的に知っている情報も進学指導に生かすことができます。だから、日本語教師として日本人として、一人の人間として様々な経験を積むことは大切だと思っています。(関川)

財布がありません

いつも午前の授業後にすぐ帰ってしまうベトナム人学生が、午後学校にいました。困った様子で「先生、財布がありません」と言ってきました。「新大久保までいきましたけど、ありません」

何のことかさっぱりわかりませんでしたが、よくよく聞くと、歩いて新大久保まで行ったところでなくしたことに気が付いたそうです。学校で落としたかもしれないと考え、学校に戻ってきたそうです。

ここは自力で解決をさせなければと思い、「Aさんなら大丈夫だから交番に行って話しておいで」と優しく励まして送り出しました。
別れ際、お互い連絡先を交換して何かあったら連絡するようにしました。

手続で欠席した翌日の朝、授業に入ると彼はいつも通りクラスメートと話していました。出席を取りながら、警察に届いていたかを聞くと、
「先生、ここ。」
と机の中から財布を取り出しました。
「見つかってよかったね。」
と返すと、
「ちがう。ここにあった。」
「えっ?」

めでたし。めでたし。(阪上)

はげます

上級クラスで、「受身形」(足を踏まれた、財布を盗まれた、等)がどのような場面、目的で使われるのか、という学習をしていた時のことでした。これは初級後半の学習項目ですが、文脈に合わせた運用をするのは難しいため、上級でも扱うことがあります。

その中で、「話者(=私)を主語にして、動詞を受け身にする」という練習をしていた学生が困った顔で質問してきました。
「先生!!『失恋したとき、友だちは私をはげました』はどういう意味ですか!?」
周りの学生も「私もわかりません」とほぼ全員がこちらを見ています。
「それは、『頑張ってね』とか『大丈夫だよ』とか友達が言ってくれた、ということですよ」
と説明しましたが、学生は「????」という顔。しかし、彼らは日本語の新聞を読み、日本人とディスカッションができる上級レベルです。
(何がわからないんだろう…?「励ます」という単語は知っているはずなのに…)

困って、学生の辞書をのぞき込むと……そこには「禿げる」の文字が。
A 「はげます(励ます)」→「はげまします」→「はげまされます」(正解)
B 「はげる(禿げる)」→「はげます」→「はげられます」
クラスの半数以上が、「失恋したとき、私は友達にはげられました」と解答していたのです。
失恋したストレスで私は禿げた。友達は関係ない文なのになぜ受け身にするのだろう?」という疑問を持ちながら。

学生は「音」で言葉を捉えるので、思わぬ「似ている言葉」の間違いが発生します。だから、学生が作る「おやじギャグ」のセンスは天下一品。
当校にいらっしゃることがあれば、たくさんのネタをお話しします。(勝間田)

若いときの苦労は買ってでもせよ

ある学生から、卒業式の日に手紙をもらいました。手紙には、「日本語学校の授業のおかげで緊張に強くなって、自信を持つことができるようになりました。」とあり、私はなるほどと思いました。

確かに、この学校の授業は教師とのインターアクションを重視しているため、授業中、学生に意見を求めることが多いです。また、どのクラスでもスピーチ、プレゼンテーションなどが定期的に行われ、人前で話す機会が多くあります。それに、留学生の入試には必ずと言っていいほど面接があり、その練習も学校で行います。このような経験の積み重ねによって、緊張や自分の意見を言うことに慣れ、自信がついていきます。入学したばかりの頃は、スピーチでガチガチに緊張していた学生も、卒業する頃には、堂々と人前で話すことができるようになります。

先日、手紙をくれた学生が挨拶に来てくれました。大学はどうかと聞いたところ、日本人の大学生は恥ずかしがって、あまり発表したり、自分の意見を言ったりしないと言いました。それは日本人の学生がまだ経験が少ないからだと彼に伝え、○○さんが積極的に行動して、日本人の学生を引っ張ってあげたらいいとアドバイスしました。

「若いときの苦労は買ってでもせよ」という言葉がありますが、本当にそうだなあと感じます。若くして自分の国を離れ、いろいろな壁にぶつかっている学生達を見て、逃げずに立ち向かってほしいと思うと同時に、うらやましさも感じる今日この頃です。(土田)

iPadを授業に取り入れる

その日の授業は「プレゼンテーション」。ねらいは「日々の生活で“もったいない”と思うことを日本語でまとめる」「3~5分で、相手に興味を持ってもらえるように話す」です。
テーマは学生が自分で考え、「食品ロス」「折り畳み傘」「母国のお正月の飾り物」「ゴミは、ホントは宝物?!」などさまざま。写真やデータも準備されています。

そして、本番当日。いつもなら、発表前に何回か原稿を読み返し、その後、クラスで発表…となるのですが、この日は練習にiPadを投入しました。
使い方は「ペアになって、相手のプレゼンをiPadで撮影する」というシンプルなものでしたが、いざ練習が始まると、
 ・撮影前に、ブツブツつぶやきながら何回も原稿を読む
 ・写真やデータがどう見えるかを事前にチェックする
 ・自分の動画を見返して、日本語・表情に納得できず、撮り直す
 ・相手のプレゼンについてアドバイスする
など、日本語を繰り返し話す姿が見られました。

中には、「髪型が乱れていないか」「かわいく映っているか」を入念にチェックする学生もいましたが、これもいいプレゼンをしようという気持ちの表れでしょうか??
撮影後には、クラスメートの動画を見たいという声が多く、動画を見ながらアドバイスを送り合う姿も見られました。

 

今、言語の学習ツールは変化しています。学生の日本語力が伸ばせるよう、効果的な学習の方法や環境を提供していきたいなと思います。(水野)

反抗期

誰しもが、反抗期を経て大人になっているのではないでしょうか。

上級テキストで親子ザルの『愛情としつけ』というテーマがあったので、関連活動として学生に自分の反抗期についてのスピーチをしてもらいました。ある二人の学生を紹介したいと思います。

Eさんはクラスでもおとなしく、真面目な学生です。しかし、スピーチを聞いてクラス全員が驚きました。親への反抗としてタバコやお酒、さらにはバイクまで乗り回していたそうです。しかもそれが中学生の時と聞き耳を疑いました。「人に歴史あり」「人は見かけによらない」という言葉がこれほどストンと入る例はありませんでした。このスピーチの日を境に、彼のあだ名はE先輩となりました。

また、照れ屋なTさんはスピーチをなかなかしようとしません。理由を聞いたところ、彼はニヤリとしながら「今が私の反抗期です」とのこと。機転のうまさについ笑ってしまいましたが、教師としてそれを許すわけにはいきません。ぜひ武勇伝を聞きたいと盛り上げ、他の学生と同じようにスピーチをしてもらいました。実は高校生の頃に必死に先生に反抗していましたが、先生はいつも笑って相手にしてくれなかったそうです。高校生の時と同様に、今回の授業でもTさんの反抗は流されるという結果になりました。

授業が終わろうとした時、「先生の反抗期は?」という質問を受けました。思い返せば中学生の時、担任の先生に意味もなく反抗していたことを思い出しました。「教師になって、その先生の気持ちがわかりましたか」と学生に言われ、なぜか当時のその先生に言われているような気分になりました。はい、今はとても反省しております。

 

みなさんの反抗期はいつでしたか?(三澤)

文化を教えること

「先生が桃太郎と浦島太郎を教えてくれたおかげで、日本人の会話についていけました。」
これは卒業生のAさんから受けた報告です。

読解の授業で、いつもの教科書ではなく、特別に昔話の「桃太郎」と「浦島太郎」を読んでもらったことがあります。日本人なら誰もが知っているこの二つの昔話を、日本語を学ぶ学生たちにも知ってほしいと思ったからです(ちょうど携帯電話のCMの「三太郎」が話題になっている頃でした)。学生たちは「初めて読みました」と新鮮な表情で、楽しそうに読んでいました。

その約1年半後。Aさんが日本人の知人のお子さんに会った際、「髪型が桃太郎みたいでかわいいですね」と言ったら、「え、桃太郎、知ってるの?」と驚かれたそうです。

 

また、別の日に、日本人の友人達とゲームをしていたら、ゲームに浦島太郎が出てきたそうです。友人に「Aさんは浦島太郎、知らないかな?」と言われたそうですが、Aさんは「知っているよ」と答え、そのまま友人達の話題についていけたそうです。

「日本語を教える」と聞くと、「語学力を上げる」とだけ考えてしまいがちですが、文化について説明したり、背景知識を与えていったりすることも「日本語を教える」ということだと言えるのかもしれません。

今日の授業が未来の学生たちのコミュニケーションの場面で役立ちます。そう思うと、授業準備に力が入ります。(阿部)

 
 

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