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日本語教師こぼれ話 2019年

若さってすばらしい

ベトナム、タイ、フィリピンの学生がいるクラスでのこと。その日の授業は「腕、ひじ、背中」などの体の部位と、「曲げる、伸ばす、まわす」などの動作表現でした。イラストを見せながらことばの導入や確認をしていきました。学生たちは自分の体の一部なのに、日本語で何というか知らなかった!と気がつき、一生懸命メモをとりながら覚えようとしていました。

そんな学生たちにさらに楽しく覚えてもらうため、応用練習として、歌の振り付けに挑戦してもらうことに。選んだ歌は「世界に一つだけの花」。休み時間に日本の歌を口ずさむこともある彼らでしたが、その歌を知っている人はいませんでした。

まずは日本人が歌っている映像を見せ、曲の雰囲気を知ってもらい、次に歌詞を確認。比較的易しい日本語で書かれた歌詞は、学生たちにも理解しやすいようでした。次に、その日の学習内容である体の部位や動作表現を使って、「指で1を作って、手を前に伸ばす」「胸の前で手を握る」など、振り付けをしてみました。2回ほど全体で練習をしてからいざ本番、映像に合わせて動いてみました。すると驚いたことに、練習した振り付けだけではなく、なんと歌までもメロディに合わせて大きな声で歌っているのです。日本語の歌と振り付けに挑戦してくれたことも嬉しかったのですが、学生たちのそれらを覚えるはやさに、若さのすばらしさとそれが世界共通であることをひしひしと感じたのでした。(川畑)

遠足で見つける日本

先日、遠足で鎌倉へ行ってきました。今回のルートは鎌倉大仏、長谷寺、明月院、湯呑みの絵付け体験をするという初めて実施したコースだったので、「若い学生達は鎌倉の町を見て、何をどう感じるだろうか」と行く前は心配でした。

当日、学生たちは初めて見る大仏に、「おお!」と驚き、楽しそうに写真を撮っていました。大仏の胎内に入り、「これはいつ作られたんですか?」と質問をしてくる学生もいました。 行く先々の自然も気に入ったようで、散歩をしたり、座って建物を眺めたり、動画を撮ったりして、思い思いの時間を過ごしていました。

そして、特に印象に残ったのは、ある駅でのことです。電車を降り、改札へ向かった学生達が「先生、どうやって出るんですか?」とざわついていました。その駅は駅員がおらず、切符を箱に入れて出るようになっていました。「何これ!」「なんで!」「初めて!」という学生の反応がとても新鮮でした。日本人である私にとっても珍しいことでしたが、学生達にとっては大きな衝撃だったようです。さらに、後日書いた感想文には、お参りの前に手を洗って清めるという習慣を初めて知った、などが書いてあり、新しい発見が多い遠足となったようです。

そして一か月後、絵付けをした湯呑みが仕上がって、皆の手元に届きました。湯呑みを見るたびに、新たな発見をした遠足を思い出すのではないでしょうか。(塩沢)

日本語学校の教師

千駄ヶ谷日本語学校には、男性も女性も幅広い年齢層の、様々な背景を持つ教師がいます。

大学を卒業してすぐに教師になる人もいますが、長年専業主婦をしていた人や、教育と関係がない企業で働いていた人が大勢います。

当校では、3、4名の教師で1つのクラスを教える、チームティーチングを行っていますが、教師によって学生を見るポイントが違うことがあります。

先日、「学校への手紙」という作文の授業をされた先生から「Aさん(学生)は、勉強は熱心ではないけれど、発想が面白い学生ですね。」と言われました。ほとんどの学生は、「テストを無くしてほしい」などの想像のつくものでしたが、Aさんは「もっと課外授業を増やしてほしい」、「スポーツ大会をしてほしい」と書いたそうです。

私は日本語力にばかり注意が向いてしまっていましたが、1人1人の長所に気がつけるのは、チームティーチングのおかげだと思いました。学生との出会いはもちろんですが、私にとって未知の経験をされてきた先生方との出会いもこの仕事の魅力です。(中田)

いつ使うことばなのか

先日、とある初級クラスの学生が「先生!昨日、日本人と友達になりました」と、嬉しそうに報告をしてくれました。どうやら、カフェで日本語の勉強をしているとき、隣に座っていた大学生に、日本語を教えてほしいとお願いしたようなのです。しかし、それだけで終わらず、意気投合し連絡先まで交換したと言うので、驚きました。

「昨日勉強したばかりの言葉を使いました!丁寧に言うのは大切ですね」とのこと。友達になるための言葉?昨日の授業内容を思い出してみると…。「あのう、すみません(相手に話しかける)」「今ちょっとよろしいでしょうか(都合を聞く)」「日本語を勉強しているんですが、わからないので、教えていただけませんか(丁寧にお願いする)」という表現でした。練習の成果が早速でたようで、嬉しくなりました。

実際の授業では、“日本語学校の先生に作文のチェックをお願いする”“アルバイト先の店長にわからないことばを聞く”などの場面を想定して練習をしたのですが、この学生のように、知らない人に話しかけてお願いをするということも考えられると思います。(もちろん、皆が皆、その場面に遭遇するとは限りませんが。)

勉強しても、そのことばをいつ使えばいいのかわからなければ、本当に習得したとは言えません。日本語教師として、学生が実際に使うのはどんな場面かというのを常に意識し、会話練習を組み立てる重要性に改めて気付かされた出来事でした。(小池)

授業でできる工夫

「覚える言葉が多くて大変です」と、初級が終わり、中級の学習を始めたばかりの学生からよく聞きます。初級で学ぶ語彙は日常生活でよく使われる身近なものが多いです。一方、中級では、漢字語彙や、抽象的な意味を持つ語彙が増えます。学生の中には、初級との差に驚く人が少なくありません。

私は、日本語は語彙を多く知れば知るほど、話題の“種”が増え、会話がより楽しくなると思っているので、学生に「頑張って語彙を覚えよう」と思ってもらえるような授業を心掛けています。

先日、ある中級クラスで既習語彙を復習しました。まず、「休暇を[  ]」のように、空欄に入る適当な言葉を選択肢から選んでもらいました(この場合は[過ごす])。例文は「休暇を過ごす」のような平叙文ではなく、「休暇を過ごすなら、どこで何をしたいですか」というように、全て質問文にしました。話す活動につなげようと思ったからです。

答え合わせの後、完成させた質問文の中から、話したいものを選び、3人程度で話してもらいました。ある人達は「親子は似ていると感じるのは、どんな時ですか」という質問を選び、「子供の頃は笑い方が母に似ていた」「私は、外見は父似だが、性格は母似だ」等と、自分のことを話していました。皆が話を楽しんでいるのを見て、この活動が語彙を増やすきっかけになったらいいと感じました。

学生の学習意欲が高められるよう、私は今後の授業でも様々な工夫をしていきます。(濱口)

休みの日も気が抜けない

私は学校の近くに住んでいるため、学校帰りに立ち寄るスーパーやコンビニで「先生!」とよく声をかけられることがあります。学生が客とし来ていることもあれば、レジでアルバイトをしていることもあります。学校では「教師」という鎧に身を固めて過ごしていますが、一歩学校を出ると鎧を外しているため、ふいに声をかけられるとびっくりすると同時に、プライベートな生活をのぞかれた感じがして、少し恥ずかしくもなります。

この間も、週末銀行へ行った時に「先生!」と声をかけられ振り向くと、卒業生でした。卒業後の大学での様子を聞いたり、日本語学校でできた友人との旅行の写真を見せてもらったりと、話がはずみました。このように、学校の外で卒業生に声をかけられるのはとても嬉しいのですが、たとえ休みの日であってもすっぴんや変な恰好をして街をうろつくことができません。通勤の便利さから学校近くに住まいを設けましたが、学校帰りや休日にこのようなことが待っているとは思いもしませんでした。これから教師になる方は、お気を付けください。(山崎)

日本語を話したい気持ち

先日の遠足で、江ノ島水族館へ行きました。高田馬場から江ノ島までの道のりは電車で約1時間半です。私が担任をしているのは全員ベトナム人の初級クラスで、学生たちは日本語が日々上手になっているとはいえ、まだ分からない言葉や文法が多いです。授業中は日本語を話すことをルールとしていますが、同じ国籍だと母語を話してしまうことが多々あります。そんな学生たちとの長い電車移動の最中に、何を話そうかと私は少し考えていました。

しかし、私の少しの不安に反して、電車移動の間、学生たちは自分が使える日本語で、最近あった日本人との交流や発見、自分の将来のこと、国の家族や生活のことなどを、たくさん話してくれました。誰かが言葉に詰まったり間違えたりすると、みんなで正してあげたり、教えたりしながら、自分が伝えたいことを日本語で伝えようとしてくれました。話題は尽きず、目的地までは本当にあっという間でした.

日々の授業や休み時間に学生と話しますが、ゆっくり一人一人と話す時間は中々とれないので、学生のことを知るいい機会になりました。そして、授業で習った日本語を使えるようになっていることを改めて実感し、何よりも、学生たちの日本語を話したいという気持ちの強さに正直驚きました。日本語はまだまだ上手とは言えない初級の学生ですが、自分の使える日本語を使って日本語を話す意欲の高さとエネルギーは本当に素晴らしいと思います。(上原)

花マル

ある中級の漢字クラスでのこと。
このクラスでは前回の授業で学習した漢字の読み書きを確認するため、毎回授業の始めにミニテストをしています。

ある日、前回のテストを返却していると、一人の学生に「先生、今日は花がありません。」と悲しそうに言われました。何のことかわからず、机の上をのぞくと、返したテストの点数のところを指していました。
あ!花マルがない!いつも満点の学生には点数の横に花マルを書いていたのに、忘れていました。謝りながらその場で花マルを書くと、何とも満足そうな笑顔に。大人っぽいクールな男子学生だったので、花マルを楽しみにしていることが意外でなんだか微笑ましかったです。

日々、プリントや作文、テストなど集めてチェックしています。教師にとっては文法や語彙の定着はもちろん、学生がどんな生活をしているのか、どんな考えを持っているのかを知る大切な機会です。同時に学生にとっても、教師の評価を受け取れる大切な機会であり、楽しみにしていたり、ドキドキしていたりしながら待っているんだなと改めて感じました。

限られた時間の中ですが、心を込めてチェックしたいと思います。(小山)

漢字を書こう

私の担任クラスの学生の出身国は、ベトナム、タイ、サウジアラビア、モロッコ、ポルトガル、ロシア、ウズベキスタンなどの多国籍で、全員、非漢字圏の学生です。彼らにとって日本語の最大の難関は漢字です。漢字の書き方は彼らの母語の文字の書き方と全く違います。たとえば、アラビア語は「右から左」の横書きで、文字と文字を続け書きにします。また、語末で、漢字のような「止め」「はらい」「はね」のようなものを意識することはありません。

そんな彼らに漢字の書き方を教えるとき、私は最初にカタカナの『オ』を練習してもらいます。「オ」には、漢字の基本である「左→右」「上→下」「止め」「はね」「払い」という要素が含まれているからです。また、「止め」「はね」「はらい」は「ストップ」「ジャンプ」「ノンストップ」と表現しています。ある学生のつぶやきをヒントにしました。

その後、漢字に挑戦です。「さあ、漢字の『九』を書いてみましょう。まず、カタカナの『ノ』を書きます。上から下に少しカーブして、ノンストップ。次は、左から右へまっすぐストップ。そのまま、下に少しカーブして、右にまっすぐ、最後は上にジャンプ!」という具合です。そして、上手に書けたら思い切り褒めます。みんなもうれしそう。「漢字がかっこよく書けるってかっこいい」と彼らも思っているのです。基礎ができれば、多少画数が多くなっても大丈夫です。

これからも、「かっこいい」学習者を増やしていきたいです。(古谷)

niwa niwa niwa

私の名前は「丹羽(にわ)」だ。この名前が意外なところで役に立つ。 非漢字圏の学生の中には漢字学習に取り組もうとしない学生もいる。そういう学生に対し、私は毎回こんなことをする。「niwa niwa niwa niwa……」と板書。学生から「ニワニワニワ……先生の名前?」という声が聞こえてきたらすかさずniwaの下に「にわにわにわ……」とひらがなを付け加える。皆一様に「??」な表情。私もいっしょに「??」な顔をして見せたあと、「にわにわにわ……、全部ひらがなです。文の意味が分かりません。でも、漢字を書きます。文の意味が分かります!」と、ちょっと得意げに言う。

「にわにわ」の下に「丹羽 庭」と漢字を書く。ホワイトボードに大きい四角を書き、「これは私の家です。庭です。丹羽さんの庭」。四角(庭)の中に鶏が2羽歩いている絵を貼る。引き続き漢字を書く。「二羽、鶏」。ここで序数詞の復習もする。「ペンは1ぽん、2ほん、3ぼん。りんごはひとつ、ふたつ、みっつ。じゃあ、鳥は?」。このようにして、文の意味を理解させる。

次に、ホワイトボードの板書を上から見直す。「にわにわにわ……」は分からない。でも「丹羽さんの庭には二羽鶏……」だと分かるのだ。「だから、漢字は大切です!」で、一斉に拍手喝采が起こる……わけではもちろんないのだが、学生のまなざしは真剣で、興味深げだ。必死にノートに書きとっている学生の姿に漢字指導の手ごたえを感じ、今日も私は「niwa niwa niwa」 に励む。(丹羽)

 
 

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