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日本語教師こぼれ話 2022年

学習者目線で考える

私にとって日本語は母語なので、日本語が学習者にはどのように聞こえ、 どの程度理解できているのかを正確に実感することは難しいことです。それが日本語教師を始めたころから悩みの種でした。

今、心掛けているのは、「これが英語だったらどうだろう?」「私はこれを理解できる?」「使える?」といった英語学習者としての目線で、 想像力を働かせることです。そうすると、「これは知っているけど使いこなすのは難しい。」「じゃあ、授業で練習する価値がありそう!」 などと授業のイメージが湧いてきます。私自身が外国語学習で苦労した経験は、直接法で教える上でとても役に立っています。

教師になったばかりの頃は、テンポの良い授業がしたいという教師目線の気持ちに囚われ、 強引に授業を進めてしまうことがよくありました。「学習者目線が大切だ」ということは当たり前のことですが、頭でわかっているのと、 自分で経験して気づくのでは全く違います。そのことが実感できてから、私の教え方も変わってきているような気がします。(本田)

研究計画書指導の極意

私は大学院進学コースで、日本語を教えている。そのため大学院進学指導も行う。研究計画書の添削をしたり、時には一緒に研究内容を考えたりすることもある。

学習者は海外で大学を卒業して来日している。志望する専攻は多岐にわたり、専門分野についての知識も深い。学習者から研究計画書の添削を依頼された。専門は法律。 私は法律のことを知らない。では、そのような中で研究計画書をどのように添削すればいいのか。

まずは、その学習者の志望校と行きたい研究室を調べ、教授の専門を見てみる。専門の内容はさっぱりわからないながらも、キーワードは拾える。 そこで、学生の研究計画書を見てみる。研究内容は、概ね研究室に合っていて、その教授のもとでちゃんと研究できそうだ。しかし、ここまで来て、文章の違和感を見つける。

「これでいいんだろうか。たしかに専門知識は十分だ。内容も詳しい、教授の研究内容も理解している。でも、なんでかな、話が入ってこない。」

ここに私達日本語教師の出番がある。私達にできることは、「なんだか変だ」、「きっと考えていることはあるんだろうけど、これじゃあ伝わりにくい」 という日本語話者として抱く感覚を、言語化して伝えることだ。

細かく言えば、一つ一つの文の構造、文と文とのつながり、大きく言えば、段落の構成、段落と段落とのつながり、もっと大きく言えば根拠から結論までの流れ。わかりやすい文章にはわかりやすい理由がある。私は次のように添削に臨んでいる。
 ①論理的でわかりやすい文章の特徴を理解し、教科書等の文章を読んで分析する力を身に付ける。
 ②①に基づいて学習者の研究計画書を分析する。必要に応じて、本人に書きたかった意図を確認する。
 ③修正点とその理由を言語化し、学習者にわかりやすく伝える。
日本語教師としての研究計画書指導の極意は、ここにあると思う。 (清水)

小さな成功体験

学生が苦手だと感じることの一つが、日本人との電話だという。日本語能力試験最上級レベルのN1に合格した人でも、日本人との電話はできればしたくないそうだ。電話だと相手の表情が見えず、コミュニケーションがとりにくいからだという。
先日、ある学生から、入学手続きについて大学に電話で問い合わせたいのだが、代わりに電話してくれないかと頼まれた。私はその依頼を引き受けようか迷った末、学生自身に電話させることにした。 というのも、学生は日本語学校を卒業して社会に出たら、自力で様々なタスクをこなさなければならないからだ。困った時に誰かに助けてもらえるとは限らない。
その学生は自分で電話するように促されて、不安な表情を浮かべた。そこで、私は電話をかける前にシミュレーションを行い、この通り進めれば大丈夫だと励まし、万一の時は電話を代わってあげると約束した。
いよいよ本番。学生は「発信」ボタンを押し、相手が電話に出るのを待ち、私はそばで様子を見守った。話はシミュレーション通りに進み、私が代わることなく終わった。
学生は無事に電話での問い合わせができて安心した様子だった。「先生が隣にいてくれたから、落ち着いて話すことができた」という言葉を聞き、私はこの小さな成功体験が自信につながればと願った。
学生が小さな成功体験を積み重ね、自信をもって日本で暮らしていけるように、私は今後も様々な工夫をして学生に接していこうと思う。
(濱口)

海外オンラインクラス学生の来日

コロナウイルス蔓延の影響で、千駄ヶ谷日本語学校の入学が決まっているものの日本に入国できない新入生のために、海外オンラインクラスを開講しています。私は10か月間、そのひとつのクラスの担任をしていました。

入国制限が緩和され、先日、とうとう、そのクラスの学生たちが入国してきました。最初に入国した学生の通学初日のことです。私は他の先生方と一緒に、その学生の授業が終わる時間に合わせて、校舎の玄関で彼に挨拶をしようと待っていました。エレベーターから降りてきた学生は私の想像よりずっと背が高くて驚きました。その学生はちょっと緊張した様子で私たちと話をしてくれました。本当は、学生の方から教務室に出向いて私たちにサプライズをしたかったそうです。私たちが歓迎の気持ちを表したかったように、この学生も学校に通える嬉しさを表したかったのかもしれません。

10か月間のオンライン授業を通して対面クラスの学生と同様に親しみを覚えた学生たちが、今、待ちに待った来日の夢を叶えています。学生たちがこれから更なる夢を叶えるため、私たちの仕事が一助になれば幸いです。(中田)

日本語の発音は難しい?

日本語の授業では、学習者が新しく学んだ言葉を理解しているか、同じ母語同士の学習者や教師が確認するために、母語で何というか聞くことがあります。 例えば、「‘ありがとう’は〇〇語ではどう言いますか」といった感じです。単純に私の好奇心から聞くこともあります。

ある日、私は四川料理の麻婆豆腐について中国の学生に質問しました。
私  「麻婆豆腐、麻婆春雨、麻婆ナス、他に、麻婆○○はありますか。」
学習者「マーボーマン!」
と力強く答えました。

私と中国語圏以外の学習者の頭の中には、「スーパーマン」が浮かびました。 私はジェスチャーでスーパーマンのポーズ(片手を上にあげて、片手を腰にあてるポーズ)を取って、「こういう感じ?」と聞いてみると、中国の学生が数人で相談して、 「饅頭の‘マン’です」と答えました。そこで私は、なぜスーパーマンと誤解したのか考えました。 学習者が発音した「マーボーマン」は「マン」が下がっていたために「スーパーマン」を思い描いたのでした。 学習者が「饅頭の‘マン’です」と説明したことで、「なるほど!中華まんの具が麻婆なんだ!」と理解できました。 頭の中がすっかり「スーパーマン」だった私と中国語圏以外の学習者は爆笑しながら納得しました。
 このように、発音の違いで誤解が生じることもあるため、日頃からの発音指導が大切なんだと改めて思いました。 (倉本)

 
 

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